自然言語によるカスタムオーディエンス構築:Amazon Marketing Cloud 活用ガイド

自社商品のマーケティング戦略を支援する実践的プロンプト例

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目次

Amazon Marketing Cloud(以下、AMC)は、Amazon広告運用における高度な分析とターゲティング設計を可能にするクラウドベースの分析環境です。2025年7月には、新機能「Audience SQL Generator」が正式にローンチされ、自然言語を用いて誰でも簡単にカスタムオーディエンスを作成できる環境が整いました。これにより、マーケティング部門や広告運用チームの担当者が、SQLの専門知識なしに目的に応じたユーザーセグメントの抽出と広告配信戦略の実行を迅速に行えるようになりました。

本記事では、Audience SQL Generatorの機能概要と、自社商品を軸にした具体的なプロンプト例を目的別に整理し、実務に直結する形でご紹介します。

Audience SQL Generatorとは

Audience SQL Generatorは、AMC内で2025年7月に正式リリースされた自然言語インターフェースです。マーケティング担当者が自然な日本語や英語でオーディエンス条件を入力すると、AMCのデータ構造に準拠したSQLクエリが自動生成され、そのままオーディエンスとして保存・活用できます。

機能の主な特長

  • 自然言語での指示が可能
    例:「ブランドABCの商品を過去90日で2回購入したが、上位モデルは購入していないユーザーを抽出して」

  • SQLの自動生成と表示
    AMCの標準スキーマに従ったクエリが生成され、条件の確認・調整も可能です。

  • GUI上で完結
    クエリ作成からオーディエンス保存、DSPとの連携までがAMC内のGUIで完結します。

  • 実務レベルのセグメント構築に対応
    閲覧履歴、カート投入、購入履歴、広告接触などの複数指標を掛け合わせた高度な条件設計が可能です。

Audience SQL Generatorは、従来の「分析担当に依頼してSQLを書いてもらう」プロセスを不要にし、マーケティングチームが自走できる仕組みを実現します。

自社商品の活用を前提としたプロンプト例(目的別)

1. リマーケティング(カート放棄・商品閲覧のみ)

商品閲覧後、未購入ユーザーの抽出

  • プロンプト:
    「過去30日間に当社商品(ブランドABC)の商品詳細ページを閲覧したが、購入していないユーザーを抽出して」

カート投入後、未購入ユーザーの抽出

  • プロンプト:
    「当社商品(ブランドABC)をカートに入れたが、購入に至らなかったユーザーを対象にして」

目的:購買意欲が高いが離脱したユーザーへのリターゲティング広告施策

2. 新規見込み顧客の抽出

  • プロンプト:
    「過去180日間に当社商品(ブランドABC)を一度も購入していないユーザーだけを対象にして」

目的:ブランド未接触の新規ユーザー向け認知拡大および初回購入促進

3. ブランドロイヤルユーザーの抽出

  • プロンプト:
    「過去12ヶ月間で当社商品(ブランドABC)を3回以上購入しているユーザーを抽出して」

目的:LTVの高い顧客層への新商品訴求やロイヤルティ施策の展開

4. 競合比較ユーザーの抽出

  • プロンプト:
    「過去30日間に当社商品(ブランドABC)と競合ブランドXYZの商品を両方閲覧したユーザーを抽出して」

目的:比較検討層に対して、自社商品の差別化ポイントを訴求

5. アップセル/クロスセル対象の抽出

上位モデル未購入者の抽出

  • プロンプト:
    「当社のエントリーモデル(ASIN123)を購入済みで、上位モデル(ASIN456)を購入していないユーザーを抽出して」

関連カテゴリ未購入者の抽出

  • プロンプト:
    「当社のスキンケア商品を購入済みで、メイクアップ商品は未購入のユーザーを対象にして」

目的:既存顧客への単価アップ・カテゴリ拡張施策(クロスセル)

6. ハイバリュー顧客の抽出(RFM分析)

  • プロンプト:
    「過去12か月間で当社商品(ブランドABC)の購入金額が上位10%に入るユーザーを抽出して」

目的:高LTV顧客へのプレミアム施策やインサイト分析の基礎データ構築

7. 類似オーディエンスの構築(Lookalike)

  • プロンプト:
    「当社商品を頻繁に購入しているユーザーに似た購買傾向を持つ新規ユーザーを抽出して」

目的:優良顧客に近いプロファイルの新規見込み客を拡張ターゲティング

8. 季節キャンペーン対象者の抽出

  • プロンプト:
    「前年の夏セール期間中に当社商品を購入したユーザーを抽出して」

目的:リピートが期待できる過去施策参加者への季節プロモーションの再訴求

9. カテゴリ横断購買ユーザーの抽出

  • プロンプト:
    「当社のヘアケア商品を購入したが、ボディケア商品は未購入のユーザーを抽出して」

目的:複数カテゴリへの購買拡張を目的としたクロスセル施策

10. 広告接触後、アクション未実行ユーザーの抽出

  • プロンプト:
    「当社ブランドの広告に初めて接触したが、商品ページを閲覧せず、購入もしていないユーザーを抽出して」

目的:認知後に離脱したユーザーへの再接触とアクション喚起

プロンプト作成のポイント

社内ナレッジテンプレート化のすすめ

AMCの活用を組織知に昇華するには、以下のようなテンプレートでプロンプトと成果を記録・共有することが有効です。

まとめ

Audience SQL Generatorの登場により、Amazon広告のターゲティング設計はよりスピーディかつ精緻な運用が可能になりました。特に自社商品に特化した条件を自然言語で設定できることで、広告施策の仮説設計から実行までをマーケティングチーム主導で完結させる体制が実現します。

まずは1つのプロンプトから始め、AMC上でセグメントの構築と成果の可視化を行うことで、施策の質は大きく変わります。