Amazon DSP(Demand-Side Platform)は、緻密なオーディエンスターゲティングや多様な広告フォーマットを活用し、Amazon内外で幅広くユーザーにアプローチできる強力な広告配信プラットフォームです。
しかし、多くのブランドや代理店が設定ミスや戦略不足によって、広告予算を十分に活かしきれず、配信の無駄や機会損失を生み出してしまっています。
Picaroでは、こうした問題を解決するために「DSPアカウントオーディットの4ステップ」を提案しています。このステップを実行することで、ROIを最大化し、配信効率を大幅に改善することが可能です。
ステップ1:Viewability(可視性)の確保
DSPはCPM(1,000インプレッション単価)課金モデルのため、ユーザーが広告を実際に見なくても課金される仕組みです。ページ下部やスクロール外に配置された広告は、表示こそされますが、ほとんどの場合ユーザーの視界に入らず効果が低くなります。よくある失敗例として「CPMを抑えるために低入札に設定した結果、広告がページの目立たない位置にばかり表示される」というケースがあります。これでは予算が消耗するだけで成果が出ません。
改善策
- Viewability下限を40〜70%に設定し、目立つ位置で配信
- 入札額を引き上げ、スクリーン上部や大きな広告枠を確保
- 全体Viewabilityは70〜90%以上を目標
- モバイル/デスクトップ別にViewabilityを分析し、改善施策を分ける
ステップ2:Amazon内/外インベントリの分離
Amazon内(Amazon.com、IMDb、Twitch、Whole Foods店内デジタルサイネージなど)とAmazon外の広告枠を同じキャンペーンで配信すると、分析が複雑化し、Amazon内の高い購買意図を持つユーザーへのアプローチが弱まります。特に低入札設定の場合、配信の大半がAmazon外に偏り、Amazon広告の効果がほぼ得られないという事例も少なくありません。
改善策
- Amazon内/外を別キャンペーンに分け、成果を可視化
- Amazon内はAmazon外の2倍以上の入札額で高意図ユーザーを狙う
- 最適化後の配分はAmazon内75%:Amazon外25%が目安
- Alexa広告はほぼ100%Viewabilityを確保できるため優先的に活用
ステップ3:新規顧客(New-to-Brand)比率の改善
新規顧客比率が低すぎると、既存顧客にばかり広告を表示してしまい、既存売上のカニバリゼーション(食い合い)を引き起こす可能性があります。特に消費財ブランドやリピート商材では、既存客への再配信はLTV向上にはつながりますが、獲得フェーズの予算が不足すると新規成長が鈍化します。
改善策
- ボトムファネルでは新規顧客比率25%以上を確保
- 獲得目的キャンペーンは75%以上を目標
- 過去購入者や最近の閲覧者を除外するネガティブオーディエンス設定
- クロスセル戦略(既存客に別商品を提案)も併用しつつ新規獲得を強化
ステップ4:入札戦略の見直し
低ファネルほど購入意欲が高く、コンバージョンに直結するため、入札は高めに設定するべきです。しかし、多くのアカウントではすべてのオーディエンスに同一の入札額を設定してしまい、効果的な配信ができていません。さらに、"and"/"or"条件の設定ミスにより、本来狙いたいユーザーではない層に広告が配信される事例も見られます。
改善策
- ファネル別に入札額を逆ピラミッド型に(低ファネル>中ファネル>高ファネル)
- "and"/"or"の条件違いを理解し、誤配信を防止
- 小規模オーディエンスは高入札で確実に露出を確保
ボーナス:Merchant Tokenの設定
Seller Centralアカウントでは、Merchant TokenをDSPに紐づけることで、DSPとPPC間の売上重複計上を防げます。この設定がないと、PPCやオーガニック検索経由で発生した売上をDSPが誤って自分の成果としてカウントし、実際の効果測定が歪む恐れがあります。
改善策
- Seller CentralからMerchant Tokenを取得
- DSP管理画面の広告主設定でMerchant Tokenを登録
- 設定後は売上の重複計上が防げ、広告効果の正確な分析が可能
広告フォーマットの推奨
- 基本はレスポンシブEC広告(ASIN、価格、Primeバッジ、カートボタン表示)
- 「3円価格表示設定」を有効化してPrimeバッジを表示し、CVR向上
- オンライン動画広告は低CPMかつアトリビューション精度が高く、直接売上向けに有効
- ストリーミングTV広告は中間ファネル〜認知向け施策に活用
まとめ
DSPオーディットは単なる設定確認ではなく、予算の効率化と売上最大化のための戦略設計そのものです。Viewabilityの確保、Amazon内外の配信分離、新規顧客比率の改善、入札戦略の見直し、Merchant Token設定という4つのステップを実践すれば、無駄な広告費を抑えつつ成果を伸ばすことができます。
また、定期的な監査を行い改善を積み重ねることで、長期的に安定した成果を維持することが可能です。
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