アマゾンセラー買収ビジネス(Amazon Aggregator)について知っておくべきこと

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昨今、当社代表が日本法人のリードをさせていただいているBerlin Brands Groupをはじめ、Thrasioや、Perch。日本では 株式会社いつも。といった、アマゾンセラー買収ビジネス(アマゾンアグリゲーター)というものが、アマゾン界隈では非常にホットなトピックスとなってきています。

現在それらのアマゾンセラーを買収を進めている企業は全部で80社ほどあり、全社の予算総額は約8,000億円と言われています。創業2年目でユニコーンと呼ばれるまでになり、2021年年末、もしくは2022年にはIPOをするこもしれないと言われているThrsio。同様に2018年に創業し、すでにユニコーンの大きさとなったPerch。そして、ヨーロッパ発の、且つThrasioやPerchとはまた違ったアプローチでアマゾンセラー買収を進めるBerlin Brands Group(BBG)。

今後これらの巨大プレーヤーが凌ぎを削っていく業界ではどのようなことが起こってくるのでしょうか。

今回は、アマゾンアグリゲーターについて知っておくべきこととして、2021年8月10日 アレックス ショート氏が執筆した記事を、許可を取って日本語訳をさせていただきました。

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Amazonのビジネスは、ベンダーとセラーがeコマースで世界中の人々に商品を販売するという、表面的にはとてもシンプルなものに見えます。しかし、ベンダー、セラー、購買者以外にも多くのステークホルダーが存在し、アグリゲーター(アマゾンセラー買収者)と呼ばれる企業もその一つです。アグリゲーターは、Amazonの世界にとどまらず、eコマース全般の分野においても大きな役割を果たしています。

Amazonアグリゲーター(アマゾンセラー買収企業)とは?

Amazonのアグリゲーターは、アクワイアラーやコンソリデーターとも呼ばれており、Amazon内外の中小企業を買収し、事業規模と収益を拡大させている企業のことをいいます。アグリゲーターは、Amazonが多種多様な商品をベスト価格で販売することを可能にすると同時に、中小企業が単独では実現できなかった成長の機会を与えているため、必要不可欠な存在となりつつあります。

アグリゲーター企業は、事業の買収後、リソースと労力を使って収益性の高いブランドを構築し、世界展開をすることもあります。

また、投資会社としても機能しており、小規模ビジネスを購入する多額の資金を保有しています。eコマースのエキスパートやAmazonの専門家等の業界内でも優秀な人材が集まり、マーケティングや物流のデータと知識を駆使して、収益と小規模ビジネスの拡大を実現させていきます。

業界トップのアグリゲーターは、この資金力と人材を武器に、買収したブランドを世界規模に成長させることができるのです。また、エキスパートたちのSEOやAmazonの知識・経験により、ポテンシャルのあるビジネスを見極める能力も持ち合わせています。

アグリゲーターが求めているものとは?

アグリゲーターは、利益だけを求めて小規模ビジネスを購入することはありません。デューデリジェンスを徹底することで、買収ブランドの成功だけでなく、収益性が高く、ビジネス拡大と成長の可能性が担保されている企業のみを選択し、買収しています。

Amazonセラーの統合が一般的になるにつれ、いかに高品質のブランドを買収し、Amazon外のマーケットで価値あるD2Cビジネスに発展させることが出来るかが、重要になってきています。

アグリゲーターは、Amazonのサードパーティー・セラーを買収して、Amazon中での成長をさせる場合がほとんどですが、最終的にはアマゾン以外の他のチャネルや、他の国でも拡大させることを目指しています。Amazonのエコシステム、グローバルアクセス、巨大な顧客基盤は、知識豊富なコンソリデーター企業の下に置かれた場合、ビジネスが大規模に拡大するための非常に重要な要素となります。

また、価値あるビジネスと、そうでないビジネスとを見極めるために、多くのステップを踏みます。世界有数の投資家から何百万ドルもの資金を得ているアグリゲーターは、買収後数ヶ月で消滅する可能性があるビジネスには、資金投入を回避する義務があるためです。

投資先は、トレンディーで人気のある小規模ブランドに注目が集まりがちですが、実は多くのアグリゲーターは、流行りの商品を販売している企業ではなく、安定した強い中小企業を探しています。

ブランドへのオファーをする前に、非常に綿密な調査も行っています。何千もの潜在的ブランドをふるいにかける技術を持っており、データサイエンスを使ってAmazon内を入念に調べ、ベストな投資機会を狙っています。

この様に、デューデリジェンスの各ステップで従業員のスキルとツールを併用し、買収すべきビジネスを判断しているのです。アグリゲーターは、レビューから商標登録の調査まで、Amazonの規制に違反している可能性があるものは何でも調べ上げるため、悪質ビジネスを避けることも出来ます。こうして、最もポテンシャルのあるビジネスに焦点を当てることが出来るのです。

アグリゲーターは、以下の点を重視して投資先を探しています。

  1. 自社ブランドやプライベートブランド商品を販売する登録ブランド
  2. AmazonのFBAブランド:物流がシンプルで、プライムステータスに認定される可能性が高くなります。
  3. 利益とマージン:最低ラインはありませんが、ほとんどのアグリゲーターは、少なくとも年間20万ドルの純利益と、10~15%程度の純マージンを求めています。

アグリゲーターへの売却を検討すべき理由

特にこの1年半の間に、オンラインショッピングの利用者は増え続け、かつてないほどの高い需要となりました。アグリゲーター企業は、単独では決して能力を発揮できない中小企業にとって、成長の機会を提供できるリソースを持っています。

例えば、中小企業は、アグリゲーター企業の専門家からSEOやAmazonの知識を得ることができます。また、自社のビジネスのように、時間と労力を割いてくれるというメリットもあります。これは、アグリゲーター企業が、Amazonセラーの多くの中小企業は創業の初心者である、ということを理解しているためです。つまり、アグリゲーター企業にとって適したビジネスかを判断するだけでなく、創業者と同じ気持ちでビジネスを大切にできるかどうかについても、デューデリジェンスを行っているということです。

アグリゲーターは、オンラインビジネスを熟知しており、その規模の大きさゆえに、コストをカットし、素早く利益を上げることもできます。また、事業を買収するとすぐに、EUやオーストラリアに進出するための在庫についても決定していきます。

さらに、物流の経験と知識を活かして、輸送コスト節約のための必要な調整を行い、広告戦略を立て、SEOを検討します。こうして、中小企業が単独で管理するよりもはるかに早くビジネスを拡大させ、利益を上げることができるのです。

もちろん、どんなビジネスにも課題はつきものですが、アグリゲーターの規模、資金、専門知識をもってすれば、課題に対処するスキルは格段に向上します。アグリゲーターのビジネスが打撃を受けても生き残る可能性は、個々の中小企業が同じリスクに直面するよりもはるかに大きいのです。

アグリゲーターが直面する課題

アグリゲーターは、中小企業に投資する多額の資金を保有しているため、成功させなければならないというプレッシャーがあります。当然の様に、Amazonのビジネスの買収にも多くの課題があり、ビジネスの成長を左右するような失敗もあります。ここでは、アグリゲーター・エージェンシーであるThrasio(セラシオ)社のJim Mann(ジム・マン)氏が説明している、ありがちな落とし穴と、回避方法について紹介します。

マン氏は、事業買収を始める際のポイントは、需要を想定しないことだと言っています。一見、成功しているように見えるブランドや商品でも、もう少し深く掘り下げることが重要です。キーワード調査や市場での競合分析を行い、現在だけでなく、将来の需要の可能性についても確認しましょう。

また、新規市場への早期参入が必須といったプレッシャーも避けるようにしましょう。類似製品を販売しているブランドに目を配り、成功の可能性を感じるならば、自社にとって適切なタイミングを見計らって行動するのです。

また、ビジネス上の意思決定を行う際には、物流を念頭に置くことも重要です。グローバルに事業を展開する際は、税金や送料、Brexitなどの複雑な事情に伴うコストに配慮する必要があるためです。

それぞれの市場にはさまざまな課題があり、ビジネスの規模を拡大したり、事業をグローバル展開したりする際にも必ず出てきます。自社の強みを見極め、他社に依頼できることは任せることも大切です。また、お客様の要望やニーズをすべて把握し、それを確実に実現することが必要となるでしょう。

Amazonアグリゲーター企業の紹介

先日、アグリゲーターの大手代理店数社にインタビューを行い、成功の秘訣を探りました。どのような企業で、どのように成長してきたのか、そしてEコマースとAmazon業界をどのように見ているのか等々について、ご紹介します。

Benitago

会社概要

ニューヨークとロンドンを拠点とするBenitagoは、2016年からアグリゲータービジネスを展開しており、彼らのビジネスセンスは素晴らしいものがあります。Amazonセラーの起業家たちによって設立されたBenitagoは、多くの点で競合他社と一線を画しています。特に、他のアグリゲーターが手をつけていないカテゴリーのブランドを開拓し、獲得しているのです。

また、自分達自身がAmazonのビジネスオーナーとして独立したことから、セラーにとって何が重要かを理解している点も強みとなっています。資金だけでなく、ビジネスの成長に必要な献身的な努力をサポートできることも、特別なアプローチでしょう。

Benitagoグループは、負債と資本を合わせて5,500万ドルという驚異的な資金を調達しているため、平均12%増*の報酬を支払う余裕があります。また、多くの競合他社よりもスピーディーに取引を完了させてきました。更に、実績あるデータに基づいた成長プロセスも相まって、BenitagoはAmazonセラーの業界トップを維持しているのです。

Amazonのインサイト

「ブランドが自分たちだけでビジネスを進められるようになったら、アグリゲーター・エージェンシーに引き渡すタイミングでしょう。アグリゲーターはブランドを成長させてくれますし、売買が成立するとすぐに報酬を支払います」とBenitagoの共同創業者のSantiago Nestares(サンティアゴ・ネスタレス)氏は提案しています。

eコマースは今後もなくなることはなく、Amazonの成長は止まらないでしょう。そのため、資本市場では、Amazonのブランドは将来性があり、投資価値のあるものと見なし始めているのです。最終的には、成長が最も見込めるブランドを選択することがアグリゲーター・エージェンシーの成功に繋がりますが、ベストな商品を提供するというAmazonと同じ目標を掲げているのです。

ネスタレス氏に今後のビジネスの方向性を尋ねたところ、「私たちはただ、お客様のために最高の商品とブランドを作り、既存ブランドを向上させていきたいと思っています。」と語っていました。Amazonは、お客様が最も良い商品を選べることが出来る様に、時間と配慮を惜しむことはありませんし、もしできない場合は交換対応もしてくれます。これは、Benitagoのビジネスプロセスにおける最優先事項でもあるのです。

*2021年1月時点での主な競合他社との比較による平均値

Seller X

会社概要

2020年にドイツのベルリンで設立されたSeller Xは、業界で最も新しいアグリゲーター企業のひとつです。Malte Horevseck氏とPhilipp Triebel氏によって設立されたSeller Xは、独立変数を表す「X」と、それぞれのセラーに適した異なるアプローチにて対応する、という意味から名付けられたそうです。

Seller Xは、ブランド運営を自分達だけでは続けられないと感じたときや、引退を考えているセラーにとって、良い選択肢となります。彼らはビジネスの可能性を最大限に引き出すための支援を行い、継続を希望する企業に対しては、買収後のビジネスへの助言や成長の一端を担うことを許可しています。Seller Xは、ビジネスの潜在的な収益を分析するために、より財務的な投資アプローチを取るのです。

Amazonのインサイト

元Amazon社員やEコマース、SEOの専門家で構成されたチームの質は高く、投資家や買収企業からも信頼され、高評価を得ています。Seller Xは、他のアグリゲーター、投資家、Amazonセラーとの間に良好な関係を築き上げてきました。また、コンテンツ、マーケティング、広告など、Amazonビジネスのあらゆる側面に特化したチームを擁しており、世界中に拠点があります。

代表のDaniel Calleja氏に成功の秘訣を聞いたところ、「私たちは、成長のための3つのレバー、①商品の普及、②地理的な拡大、③チャネルの拡大に焦点を当てています」と語っていました。

  • 商品の普及:より良い商品を作るには、色やサイズ等のSKUバリエーションにより、リスティングのコンバージョンを向上させることが必要です
  • 地理的拡大:できるだけ多くの市場に参入し、さまざまな地域にブランドを拡大します
  • チャネルの拡大:Amazon以外のプラットフォームにブランドを移行するかどうか、またどのように移行するかを決定します

これらのレバーを使って、Seller Xは多くのAmazonビジネスを収益性の高いグローバルブランドに成長させてきました。今もなお、成長の幅を拡大し続けているところです。

Thrasio(セラシオ)

会社概要

セラシオは2018年に設立され、オフセットから利益を上げるようになりました。良質なサードパーティ製品を選択することから始まったシンプルなアイデアは、雪だるま式に5億ドル企業へと成長しました。現在、業界でも有数のAmazonアグリゲーターとなり、10カ国以上のチームで500人以上が働いています。マサチューセッツ州ウォルポールを拠点とするこの専門家チームは、世界中で約100のブランドを管理しています。

Amazonのインサイト

買収責任者であるジム・マン氏にお話を伺うことができました。マン氏は、自身のビジネスを成功させた経験から、Amazon FBA販売とマーケットプレイスについての知識が非常に豊富です。セラシオ社のディレクターとして、ポートフォリオに追加する新ブランドを発掘し、潜在顧客の増加を期待されています。同業他社からも高く評価されている人物です。

最終的には、すべてのAmazonアグリゲーターは、同じエコシステムの中で同じ役割を果たし、Amazonの小規模ビジネスを持続的に拡大するという一つの目標に向かって活動しています。しかし、アグリゲーターごとにアプローチは異なります。それぞれの理念やライフサイクルのステージにあった方法で事業をしており、それが結果的にはAmazonのどこに成長を期待しているのか、という各企業の考え方の違いと言えるのでしょう。

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